【セミナーレポート】Rainbow Tokyo 北区主催:子どもの未来を考えよう「里親意向調査からみる里親リクルート」


田渕恵梨子
最近、NPO法人フローレンスさんが手がけている赤ちゃん縁組事業や、私の友人が養子縁組の仕事を始めたことで、「養子縁組」に対する情報を耳にする機会が多くなっています。
しかし、私自身はお恥ずかしながら里親と養子縁組の違いを理解ができていませんでした。

このような状況の私に、いつもお世話になっているRainbow Tokyo 北区の時枝さん、椿さんが里親をテーマにしたセミナーを開催するという情報をいただきました。
タイトルは「子どもの未来を考えよう〜里親意向調査からみる里親リクルート」。
せっかくの機会だったので参加してきました。

今回は簡単ではありますが、その参加レポートをお伝えしたいと思います。

セミナー概要

講師プロフィール

木ノ内 博道 氏

NPO法人千葉県里親家庭支援センター理事長

下養育里親・専門里親、公益財団法人全国里親会 前副会長
社会保障審議会などの委員として、改正児童福祉法などに関わる。
日本財団「里親意向調査」にも当初より関わる。

金ヶ崎 絵美 氏

十条王子法律事務所 弁護士

里親制度と養子縁組制度の違い

最初に金ヶ崎弁護士より、里親制度についての説明がありました。

里親制度とはさまざまな事情により家庭での養育が困難又は受けられなくなった子どもたちを、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下で養育する制度です。
里親は養子縁組ではありません。

養子縁組制度とは、実の親子関係になることです。
対して里親制度の場合、里親との間に法律上の親子関係は成立しません。
また、里親になると、公的機関からの経済サポートを受けることができます。
里親手当(約7万円)、養育費(5万円〜)で、トータル15万位支給されるそうです。

里親の種類

里親には下記4つの種類があります。

養育里親 様々な事情により家族と暮らせない子どもを一定期間、家庭に迎え入れて養育する里親。原則として子どもが18歳に達するまで。
専門里親 養育里親のうち、虐待や非行、障害などの理由により専門的な援助を必要とする子どもを養育する里親。原則として2年以内。
親族里親 実親が死亡、行方不明などにより養育できない場合に、祖父母などの親族が子どもを養育する里親。
養子縁組を希望する里親 養子縁組によって、子どもの養親になることを希望する里親。養子縁組の手続きが終了するまで。子ども年齢については養育里親と同様。

「里親」意向に関する意識・実態調査

金ヶ崎弁護士から里親制度の説明を受けた後、日本財団の「里親意向調査」に当初より関わっているNPO法人千葉県里親家庭支援センター理事長の木ノ内氏より、調査結果についてレポートだけでは伝わりにくい現状の問題点などについて分かりやすく説明をしていただきました。

日本には、さまざまな事情で、親と一緒に暮らせない子どもたちが約4万人いると言われているそうです。そのうちの約8割が乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしています。対して潜在的な里親家庭候補は全国に約100万世帯あるにも関わらず実際の里親意向者は約6%。日本は諸外国に比べて里親になるという感覚が非常に低いようです。
そこにはさまざまな要因がありますが、木ノ内氏がお話しされていた問題点の中で私が印象に残ったものは下記3つです。

  • 施設ではなく、家庭環境の下養育を行うことの重要性が認知されていない。
  • →子どもが施設育ちでも構わないのではないかと考えている人が多いそうです。
    でも施設は時間単位で動くため、自発的な思考が育ちません。
    例えば、普通の家庭だとお腹が空いたらご飯やお菓子を食べ、お風呂も入りたい時に入ることができます。
    それに対して施設は全て決まった時間に行動します。
    「お腹が空いたからご飯を食べる」ではなくて「6時になったからご飯を食べる」になってしまうのです。
    幼児期から思春期というのは豊かな人間性を育むためにはとても重要な時期です。
    「家庭で普通に暮らす」ということは実はとても重要なことなのです。

  • 里親相談窓口が極めて少ない。
  • →児童相談所は虐待対応で手一杯。里親を増やそうという意識が低いそうです。

  • 興味はあるけど、経済力で踏み出せない人が多い。
  • →経済サポートがあることが知られていないそうです。

    感想

    セミナーに参加したことで里親制度についての理解が深まりました。

    里親制度で月額15万円の経済サポートが得られることも初めて知りました。里親のハードルが一気に下がる良い話だと思いましたが、里子が成長すれば学費の問題などに直面すると思います。その時、里子が希望する学校に負担なく入れてあげる制度も合わせて充実するようになれば良いなと思いました。

    現在日本においては里親について一般にほとんど認知されていないのが実情だそうです。
    潜在的な里親候補者は100万世帯にも及ぶと言われているようですが、私自身、里親に経済サポートがあることを知らなかったように、日本人の里親に対する理解は極めて低いように思います。
    里親の認知を高める主な情報源として、テレビや新聞が大きな役割を果たしていることがわかっているそうです。
    うまくマーケティングを行いながら、正しい知識で里親への理解が深まると良いなと感じました。

    児童福祉法 第一条
    「全ての児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」

    里親制度とは、上記の条項の実現に向けた手段の1つだと思います。
    このことが日本社会の誰もが意識できる世の中になってほしいものです。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA