「家族とジェンダーをめぐる法律案・政策がはらむ諸問題」参加レポート


■開催日程:2017年1月27日(金) 18:00~20:00
■場所:東京大学赤門総合研究棟2階 A200番教室
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/240-s-1-1.pdf
■主催:日本学術会議

1月27日(金)、gender=のメンバー3名で東大で開催された日本学術会議主催公開シンポジウム「家族とジェンダーをめぐる法律案・政策がはらむ諸問題」に参加してきました。
このイベントはTwitterで本多由紀さんのツイートを見たのがきっかけ。Twitterはちょうど約1ヶ月前頃にスタートしましたが、このタイミングで初めていなければこのイベントの存在には気づかなかったでしょう。
全てのタイミングは、運命でつながっているように感じます。

法律・政治経済、詳しい分野ではないので正直難しかったところも多かったのですが、ジェンダーについて考えるにあたって必要不可欠な視点であると感じました。以下にレポートをまとめます。

家庭教育支援法案について

二宮 周平(立命館大学法学部教授)

【法案の内容】
家庭教育支援法案

平たく言うと『家庭で親が子に、国や社会で役に立つ人になるための教育をしましょう』『国や自治体はその手助けをします』ということ—24条変えさせないキャンペーンより

【概要と問題】
◎平たくいうと・・・
「家庭で親が子に、国や社会で役に立つ人になるための教育をしましょう」→「国家に従順な子を育てましょう」
◎国の狙い
「国家が家庭内教育をコントロールして、国家に都合が悪い人材をできるだけつくり出さないようにする」→「狙いは国民を“イエスマン”に仕立て上げ、戦争でも何でもできるような体制づくりにする」
◎国の目的
「先の戦時体制で政府が持っていた治安維持のための法的ツールを取得しようとしている」→「国はあきらかに戦争の準備をしている」

  • 家庭教育の名の下に、国家にとって都合の良い価値観が押し付けられる危険性がある。
  • 対抗軸としての「子どもの権利条約」では、「養育」と「教育」は別物である。親が責任を負うのは養育であって、家庭は教育の代替機関ではない。
  • 人格形成に国家化が口出しするということは、道徳の押し付け→伝統の継承→性別役割分担の再生産に繋がる危険性をはらんでいる。
  • 法案に盛り込まれる内容は、条例制定の促進効果を持つ。ひそやかに変えられる法律をきちんとウォッチしていかなければ、少しずつ少しずつ国の思惑通りに国民のありかたが引っ張られていく怖さがある。
  • 親子断絶防止法案について

    千田 有紀(武蔵大学社会学部教授)

    【法案の内容】
    離婚後、子と別居親の面会交流を義務付ける

    【概要と問題】—親子断絶防止法案の問題点―夫婦の破たんは何を意味するのか

  • 個別の事例(特に、認定の困難なDVなどの高葛藤事例)に配慮せず、子供本人が会いたくない場合の意思は認められない。
  • 一律に「会わせることがよいこと」としている点に問題がある。
  • 共同親権にすることで養育費を支払わない別居親(おもに父親)も多く、子供やシングルマザーの貧困を招いている。
  • 親権はもらったら終わりではなく継続のためには監視が必要。
  • 日本では、ここに介入できる専門家の数も力も不足している。
  • 公的な機関による強力な介入を是とするか否か、選択をする岐路にきているのではないか。
  • 自民党憲法改正草案について

    若尾 典子(佛教大学社会福祉学部教授)

    【法案の内容】
    自民党改憲草案24条1項 家族の「意義と任務」 

    家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。

    【概要と問題】

  • 日本的ナショナリズム。安倍政権は類を見ないナショナリズム政権である。
  • 改憲草案は、「立憲主義・天賦人権説・個人主義」の否定である。個人は家族に内包されるものであり、国・社会においては存在し得ないということ。
  • 八木秀次(1996)の夫婦別姓否定論は、個人主義+フェミニズムが、伝統・文化を否定し、結果子供が被害者になっていると論じた。2012年からの「保護者の第一義的責任」へのフォーカスは、子育ては親の自己責任と帰結しており、児童福祉法への攻撃である。
  • 「官製婚活」について〜「家族」に介入する国家〜

    斉藤 正美(富山大学非常勤講師)

    【概要と問題】

  • 国家が「家族のあり方」に介入している。
  • セクハラまがいの指導・行政からの孫請け団体による実施など責任の所在が曖昧なこと・個人情報のダダ漏れ等ツッコミどころが多数。
  • そもそも、家族形成という極めて個人的なライフイベントに国が介入すること自体、近代国家としておかしなこと。
  • 早婚や多産があたかも善であり、若者みんなの希望であるかのごとく誘導するようなパンフレットの配布も問題である。
  • 社員→企業→国家「人口減少に歯止めをかけることで社会貢献ができる」⇒国家が中心にある考え方で良いのか?
  • 「そんなことだから、結婚できないのよ」、「(女性)をお持ち帰りして下さい。どっかつれて行きなさい」といったセクハラ的指導が横行している。
  • 男女共同参画より結婚応援ばかり・・・
  • 所感

    えりこ
    私たちがジェンダーイコールの活動を開始して、はじめてこのようなジェンダー問題の有識者が集まるシンポジウムに参加させていただきました。
    正確には数えていませんが、ざっと見た感じで参加人数は150名位で、男女比率は、女性9割、男性1割といったところでしょうか。
    私たちのような活動には基本同世代の30代には賛同してもらえそうだけど、もっと上の世代にはあまり良い印象を持ってもらえないんだろうなーと勝手なイメージを持っていましたが、この会に参加していた多くの方がその「上の世代」の方たちでした。
    こんなに多くの方が熱心にジェンダー問題に取り組まれていることを知り、とてもうれしく思いました。

    各議題では、ジェンダー研究の第一人者の先生方が講師となり、今政府が進めている数々の法案の中で「家族とジェンダー」に関わるものをピックアップして、概要と問題のポイントを説明してくださいました。
    私もそれぞれの諸問題についてはWEBニュースやツイッターなどで目にしたことはありましたが、きちんと向き合ったのは初めてだったのでとても貴重な機会でした。

    二宮先生の「家庭教育支援法案」、若尾先生の「自民党憲法改正草案」を通して感じたことは、今の政府は個人主義を否定して家父長制のような体制を良しと考えているのではないかという強い疑念です。
    安倍政権は女性の活躍を推進していますが、いつも上部だけで問題の本質を追求しようとしていないように見えていたのは、基本の思想に前述の考えがあるからだと思うととストンと胸に落ちます。
    ただ、この一片の情報を知っただけで短絡的に安倍政権を全力で敵視するのは本望ではないので、今後いろんな角度からこの諸問題について学び、総合的に危険性を判断していきたいと思いました。

    千田先生の「親子断絶防止法案」については、ほとんど知識がなかったのですが、
    ちょうどその日の朝、情報番組で、親権をめぐる裁判で”一審は年間100日の面会を提案した父親側が勝訴、二審は母親が逆転勝訴”となった事件が取り上げられていました。
    その中で「フレンドリーペアレントルール」についても詳しく説明されていたので、私にとってはホットな話題でした。
    共同親権についても一見聞こえは良いと思っていましたが、実は問題があることを知り、大変勉強になりました。

    斉藤先生の「官製婚活」は、地方の婚活支援の酷い現状を知り、同じ国民として恥ずかしくなりました。
    地方が少子化対策として婚活を支援したい気持ちはわかりますが、ここまで個人の尊重や性の平等を無視したセクハラ発言や個人情報のずさんな管理が横行しているなんて。。。国や地方自治体は早期に改善を図るべきだと思います。

    会の終了後、1人ご年配の女性にごあいさつをする機会があったのですが、お話しをする中でその方が夫婦別姓訴訟の原告である塚本協子さんであることがわかりました。
    私も選択的夫婦別姓制度については賛成の立場で、一昨年の最高裁の判決が注目されていた頃にニュースで塚本さんのことを知っていましたが、ご高齢にも関わらずこういった会に積極的に参加されて夫婦別姓を訴えられている姿に感銘を受けました。
    塚本さんの活動はジェンダーイコールでもどんどん応援していきたいと思います。

    最後に、冒頭でも書きましたが、このイベントはTwitterで本多由紀さんのツイートを見たのがきっかけです。
    ジェンダーイコールのTwitterは、この会のちょうど約1ヶ月前頃にスタートしたばかりです。このタイミングで始めていなければこのイベントの存在には気づかなかったでしょう。
    行動することでいろんな世界に出会えることを改めて感じました。これからもどんどん積極的にこのようなイベントに参加したり行動範囲を広げて、まだお会いしたことのない運命の方に出会えることを楽しみにしたいと思います。

    ゆみ
    私自身このようなシンポジウムに参加するのは初めてでとても楽しみに参加してきました。
    会場へ入ると教室の中はすでにいっぱい。空いている席がちらほらという状態で3人別々に着席しました。また見渡したときの男女比はやはり女性は多かったですが意外と男性が参加していたということと、ジェンダー活動に意外と集まるところには集まるのだなと安心したということを覚えています。

    話の内容は私にとっては意外と難しく知らないことばかりで、自分はまだまだだなと感じたので、これを機にもう少し勉強していかなくてはこの活動には付いていけないと実感しました。
    上記のまとめをは本当にわかりやすくまとめてありますので、「いまこのような活動に興味があるよ」という方には一度目を通していただけると、シンポジウムの内容がわかりやすいと思います。

    一番私が心に残った内容は比較的わかりやすかった『「官製婚活」について〜「家族」に介入する国家〜』です。なぜかと言いますと…婚活に国が介入しているなんて知らなかった!
    婚活よりもっと介入した方がいい問題があるような気がして、ばかばかしいという思いしかありませんでした。でも、場所によっては介入をしなくてはいけないほど深刻な場世があるのでしょうか?謎が深まるばかり。今後この問題はどうなっていくのかが気になるところです。

    くるみ
    隣組、婚活支援、家族のあり方についての介入など、戦前のような国民を作ろうとしているという安倍政権。私はこれまで特に身に降りかかる危険として認識してこなかったけど、ひとりひとりがきちんと問題意識を持たなければ、彼らの意のままに少しずつ国を変えられてしまうんだという怖さを感じました。家族、面会交流、婚活、今回のいずれのテーマにおいても、「結婚はいいこと」「親子の愛・家族の絆はあたりまえ」「子沢山バンザイ」的な、今の日本社会では結果的に女性を家庭に縛るような価値観がベースにあるのがとても気になりました。国的には、子供増やして欲しいっていうのがあるんだろうけど、、
    女は母親としてとか妻として生きて行くことに価値を見出せない場合、子供を産むと社会的な立場が低くなってしまうのは現状、あると個人的には思っています。そこを一律に「いいこと」とする基準を見直す、理想的には「本当にいいこと」とする社会設計が必要なのではないでしょうか。

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