ある会社の求人にこう書いてあった。育児休暇の取得実績はありますか?という求職者の問いに対し、「育児休暇取得により、その後も仕事を続けている女性社員は多くいます」と。
育児は女性がするものだということを強調する表現である。
求人広告は企業の広報ブランディングといってもいいものだが、未だなお、表現のガイドラインが守られてはいない。
今年の一月、小泉進次郎議員が12日間の育児休暇をとったことが報じられた。
男性の育児休暇の取得そのものを特別なこと、珍しいこととして取り上げてはならない。
男性の育児参画が「特別なこと」となってしまい、ますます一般市民の育児休暇が取りづらくなる。
「育児休暇をとって子供たちと触れ合う時間を大切にしています」と話す二人の女の子を子供にもつ、ある男性に会った。
仕事は制作会社でのカメラマン。パートナーは看護士さん。育児休暇をとった理由は、パートナーの方が給与がいいからとのことだった。至ってシンプルだ。
育児の楽しさを実感したその男性は、自身の体験を元に、地域で育児参画への推進活動をしている。
育児をするにあたって性別は関係ない。子供を育てるという権利は誰しもがもっている。
女性が育児をするのが「当たり前」であったり、男性が育児をすることが「特別」であったりすることは決してない。性別に関係なく、育児を当たり前とするには、それを前提とした上で、万人に対し、仕事と育児の成功体験であったり、企業の取り組みの事例を紹介したりするなど、育児そのものが参画しやすいメッセージを発信する方がよい。
育児=女性という表現がなぜ出てきてしまうのかについても考えてみたい。
日本の女性の労働力率は30代で一時低下する。一人目の出産を機に一旦離職し、再就職をする女性が多い。
これをアルファベットのMにたとえて女性のM字型就労と呼んでいる。かつてM字就労は先進国に見られた現象であったが、今では日本を含む少数の国でのみ見られる現象になっているようだ。
就業率の落ち込みは、女性の結婚や育児期にみられていた。しかし現在、離職する主な理由として、結婚や出産よりも、仕事や行き詰まり感にあるという調査結果が出てきた。
女性に十分な能力開発の機会を提供していない企業側に理由があるというものだ。
つまり、企業は、女性は結婚や出産で離職するとして、男性と同じキャリア形成の機会を提供してこなかった。
企業にとって、育児休暇は離職をくい止めるための予防策であるため、離職をするのは女性という思い込みが、育児=女性を生み出しているのだと思う。こういった表現は企業自ら、「自社では女性の離職が高いんです」あるいは「自社では女性の離職が高いという偏見をもっています」といっているようなものだ。
性別の隔たりのない育児参画の実現は、伝達する側の表現から変えよう。
就職活動をしている皆さんは、就活リテラシーをもって臨んでもらいたい。
岡田恵
兵庫県尼崎市出身。
中学生の頃から学校や家庭での性別役割に疑問を感じ、大学在学時に女性学と出会ったことがきっかけで、メディアとジェンダーについて研究を始める。その後、兵庫県男女共同参画アドバイザー養成塾に通い、兵庫県男女共同参画推進員となる。現在東京都在住の会社員。