人との差があるのは当たり前
私たちジェンダーイコールは、旧来のジェンダーに対する固定観念を払拭し、「ジェンダーギャップのない社会」を目指して活動しています。ホームページをご覧になっている方には、あらかた理解されていることだと思います。
当団体は、ジェンダーについて考え、ジェンダーに関する情報を発信し、行動することを主な目的としています。ただ、よく考えてみてください。「ジェンダーギャップ」という言葉があるように、私たちの周りで“差”や“ギャップ”があるのはジェンダーに限ったことではありません。そこで今回は、ジェンダーを少し離れた話題を提供していこうと思います。
そもそも世界中を探しても、全く同じ人間というのは存在しません。たとえば、一卵性双生児であっても、それぞれの性格や好き嫌いがあって、完全に同じ人間(クローン)ではありません。人間である以上、個々人で差異があるのは当然ですよね。しかしながら、世の中の人びとの多くは、性別の差をはじめ、体格の差、生まれ育った家庭環境の差、学歴の差、職業の差、収入の差を、個人的なものさしを使って測ろうとします。人の違いを個人的なものさしで測ることには、何のメリットがあり、誰のためになり、何のためになるのでしょうか?
違いがあるから面白い―「みんなちがってみんないい」
当然ですが、人にはそれぞれの個性が備わっているから面白いのです。全人類が同じ顔、同じ性格、同じ感情、同じ服装だったら怖いと思いますよ。こうして私がコラムを書くこともないと思います。全人類で同じ考えや価値観を共有していることになりますから。そう考えると、「人と違っていてよかった」と思いませんか?
私には憧れている人が何人もいますが、その人たちになりたいとは思いません。憧れる職業もいくつかありますが、全ての職業に就きたいとも思いません。全て頭の中の妄想で終わらせて、一人で勝手に楽しんでいます。
童謡詩人の金子みすゞさんは、「みんなちがって、みんないい」と言いましたが、この言葉に込められた意味の解釈は人それぞれです。皆さんはこのワンフレーズをどのように受け止めますか?もちろん、解釈の仕方に正解はないので、好き勝手に理解していいものだと思います。
違いや差は楽しんだ方が心も豊かになる
私の金子みすゞさんの詩の解釈の仕方はシンプルです。ひと言でいえば、人と人との違いを楽しみます。普段は、さまざまな年代や職業の方に取材をすることが多いのですが、たとえば、同じテーマについてお話を伺う時でも、誰一人として同じ意見や感想を持ってはいません。部分的に重複するお話を聞くこともありますが、それでも9割方は新しい情報を得ることができます。人によっては趣味の話にもつながり、私の知らない世界を教えてくれることもあります。知らなかった世界の話を知ることで、だんだんと心も豊かになります。
これが同一人物同士間での取材だったらどうでしょう?「面白い」「楽しい」「もっと知りたい」といった感情すら抱かない可能性もありますよね。そう考えると、やはり人と違っていてよかったと思い知らされます。
大切なのは目の前にいる人を知ろうとすること
「あなたはあなただから、わたしはあなたのことなんてどうでもいい」「それはあなたの問題だから、わたしには関係ない」。このように発言する人や心の中で思っている人は、世の中にどのくらいいるのでしょうか?・・・残念ながら、たくさんいると思います。人の置かれた状況や本心を理解せずに、誤った解釈を発信する人、意図的に悪意のある情報にすり替えて発信をする人。「よそはよそ、うちはうち」ではないのです。「あなたはあなた」であり「わたしはわたし」なのです。お互いの違いを受け止め合いながら知っていく、少しずつ歩み寄っていく、それでいいのではないのでしょうか?
まずは、身近にいる人のことを正しく理解しようとしましょう。誤った理解を進めていくことほど、残酷なことはありません。全ての人を快く受け入れることができないのは当たり前です。もともと違った人間同士なのですから。ただ、「相手を知ろう」とする態度を示したり、実際の行動に移したりすることは、人を尊重する上でとても大切なことです。
反対に、自分自身を知ってもらうことも、同じくらい大切です。何か困った時に、誰かにSOSのサインを出せる人はそう多くはないと思います。このような現状には社会としての責任が大きく関わってきますが、今回は割愛します。人(あなた)を知ること、自分(わたし)を知ってもらうことは、いざという時のセーフティーネットの構築にもつながるので、普段の生活から見直してみてください。互いの違いを認め合い、尊重し合うことで、より豊かで生きやすい環境づくりを始めてみませんか?
紀本知都子
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在籍。政治とジェンダーを中心に学んでいる。
政治の意思決定の場における女性参画の機会が少ないことを問題視し、ジェンダー平等の観点から誰もが生活しやすい社会を目指して活動中。