2025年6月26日に中央大学文学部開講の「キャリアデザイン(1)」の講義のゲスト講師として大学生に向けて講義を行いました。
今回は講義概要について、イベントレポート形式でお届けします。
講義概要
- 研修名:あなたらしく生きる、働く~ジェンダーバイアスと性別役割分担~
- 日時:2025年6月26日(木)17:00-18:00(60分)
- 実施方法:対面式
- 受講生:30名程度
- 講義アジェンダ
- ジェンダー基礎知識
- ジェンダーギャップはなぜできる
- しくじりから学べ!私たちの落とし穴
- ジェンダーとキャリア – 私たちのいま
研修講師
篠原 くるみ(しのはら くるみ)

【関心のあるテーマ】性別役割分担の見直し、女子のエンパワメント、包括的性教育
【活動歴】第一子出産後にマミートラック(子持ち女性向けのキャリアコース)に陥ったことで、教育格差のない男女間でも社会的経済的格差を生む社会構造に疑問を持ち、2016年にジェンダーイコールを共同設立。
家事分担を可視化する「ハッピーシェアボード」の制作、子ども向け性教育絵本制作、学生のプロジェクト協力などに携わる。

室田 美鈴(むろた みすず)
【関心のあるテーマ】企業内に残るジェンダー格差の解消、企業や組織文化の改革
【活動歴】大企業での就労経験や夫の海外勤務への帯同を機に企業内に残る性別役割分担意識に違和感を持ち、2021年2月に参画。
以降、企業向け事業の立ち上げや男性育休取得推進に向けた企画を実施中。NPO法人ジェンダーイコールの認定企業である「ダイバーシティのすすめ」の代表として、企業のDE&I推進に関する事業を幅広く展開中
目的
- ジェンダーバイアスによってつくられる「キャリアの落とし穴」について知る
- 〇〇らしいにとらわれない、あなたらしいキャリア形成のイメージをつかむ
講義概要
0. 参加者アンケート
開始前に参加者の学生さんたちのジェンダーや仕事・家庭に関するアンケートを取りました。印象的だった回答を紹介します。
- 結婚したい/育休を取りたい:75%の方が「はい」と回答
- 母親が家事を100%担っている:50%の方が「はい」と回答
- ジェンダーバイアスを感じたエピソード
- 私(男性)は料理が得意だが、課外活動にて女性は料理、男性は力仕事全般という分担となりストレスを感じた
- 「わざわざ東京の大学に行く必要ある?」「女の子っぽくておしとやかでいいね」と言われた
1. ジェンダーに関する基礎知識
まずジェンダーについて復習もかねて用語説明を行いました。
- ダイバーシティ/ジェンダーの位置づけ
- ジェンダーに関する用語説明
- セックス(SEX)
- ジェンダー(Gender)
- ジェンダーバイアス
- ジェンダーロール

2. ジェンダーギャップはなぜできる?
次のセッションでは「ジェンダーギャップはなぜできる?」というテーマでジェンダーギャップが生まれる背景について説明しました。
- ジェンダーギャップ指数とは
- 統計的差別
- 性別役割分担
- 性別役割分担意識
データやこれまでの報道などを紹介しながら、日本の現状について説明を行ったうえで以下の投げかけを行いました。

3. しくじりから学べ!私たちの落とし穴
次のセッションでは講師2名のこれまでのキャリアの中であまり深く考えずに選択した出来事によって陥ったもやもやについて、エピソードを交えながら話を行いました。
室田からは夫の海外駐在に帯同し、離職したことでのアイデンティティクライシスに陥った話を、

篠原からは育休明けに復帰した際に時短勤務を選択したことでの感じた男女格差やマミートラックに対するもやもやについて話を行いました。

選択した当時はジェンダーバイアスについて、全く知識がなかった私たちですが、こういった強烈な違和感を感じる経験を通じて、自分たちの中にあるジェンダーバイアスに気づくことができました。
今後学生の皆さんもライフイベントの変化によって生じた分岐を「そういうものだから」「みんながそうしているから」という理由で深く考えずに受け入れてしまうと、あとで後悔をしてしまう可能性があるので、ぜひ知識として事前に知っておいてほしいとお伝えました。
こういったジェンダーバイアスの内面化による本来意図しない選択をしてしまうことは男女問わず起こりえます。言葉を知っていると、自分のもやもやを言語化する助けになるため、篠原の陥った「マミートラック」以外にキャリアを考える上で陥りやすい思考傾向に関する言葉の紹介を行いました。
・○○の壁
・ニューロセクシズム
・幻の赤ちゃん
・ミドルエイジクライシス
・インポスター症候群
・アスピレーションクーリングダウン
キャリアを考える上でのさまざまな「穴」について紹介した上で、私たちがしくじりからどのように立ち直ったのか、私たちが共通する教訓について紹介しました。
自分らしくない選択をした(=しくじった)と当時は思っていましたが、今は二人とも自分らしさを取り戻し、軌道修正ができています。今のキャリアを得たこと、またそのキャリアを得るためにどんなことをしたのかを紹介をして終了となりました。

最後のメッセージとして、「キャリアの落とし穴」について、過度に恐れる必要はないことも強く伝えました。いろんなことを恐れて、先回りして諦めてしまうことが一番もったいないため、自分の今の意思を尊重すること、またたとえ意図とは違う選択をしてしまっても軌道修正すれば、自分の道は開けることを念押しして講義は終了となりました。
学生の皆さんには実際に働き始めて、将来こういった状況に陥った際に「あ、あの時、講義でこういった傾向の話をしていた気がするな…」と思い出してもらえたら嬉しいなと思っています。
参加者の声
受講いただいた学生の皆さんより、講義後のお話などから前向きなご意見・感想を多くいただくことができました。
- 統計的差別は良くないが、仕方がないと感じる側面もある。
- 「将来を気にしすぎて選択肢を狭めないように」という言葉が響いた。今の自分が輝ける選択を、柔軟に選んでいきたい。
- 女性の立場からの社会の見え方について知らないままだったら、自分視点での発言しかできなかったかもしれない。考えを常に客観視できるようにしたい。
- 福利厚生や柔軟な働き方など、長期的な視点で職場環境を見極めたい。
私たちの話を純粋に受け止め、将来のキャリア選択に活かそうと思ってくれた学生さんが多く大変感銘を受けました。私たちも学生の皆さんが自分自身が望んだ選択ができるような社会の実現に向けてこれからも活動を頑張りたいと思います。
ありがとうございました!
ジェンダーイコールでは講義の企画実行や企業研修なども実施しています。
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