【イベントレポート】…

できること会議

できること会議さんは、さまざまな社会問題に対して「私たちにできることってなんだろう?」を会議する場を提供し、その想いを「カタチにする」サポートを行う学生団体です。

今回は、プライドmonthとして複数のイベントを開催される中、2022年6月11日、フェミニズムをテーマとした講演のご依頼をいただきました。

今回は、ジェンダーイコールより2名のメンバーが登壇者としてイベントに参加させていただきました!

https://www.instagram.com/p/Cea8qLABP2V/?igshid=YmMyMTA2M2Y=

登壇者

まい
【関心のあるテーマ】恋愛・結婚のジェンダーバイアス
【活動歴】大学生の頃から日本社会のジェンダーの価値観に違和感や生きづらさを感じていた(女子力、〇〇女子など)。このような価値観を少しでも変えていけるような取組みをしたく、2022年3月よりジェンダーイコールに参加。

久保田まもり
【関心のあるテーマ】性暴力の問題
【活動歴】中学時代から身近にある「女らしさ」「女子力」等のジェンダー規範に疑問を持っていた。このバイアスによる息苦しさを変えていけるよう活動したく、高校1年時にNPO法人ジェンダーイコールに参加。

フェミニズムとは?

フェミニズムとは、女性の地位向上・経済格差解消などのみならず、ジェンダー観による不当な扱いに対する社会運動のことです。
ベル・フックスによれば、「フェミニズムとは性差別をなくし、性差別的な搾取や抑圧をなくそうとする思想や運動のことだ」と指摘されており、フェミニズムの敵は男性ではなく、性差別そのものであると言えます。

フェミニズムの世界史(まい)

①第1波
第一次世界大戦ごろ、欧米を中心に参政権、相続権、財産税などの公的な領域・法制度へ権利を求めました。例えばアメリカでは奴隷制度廃止とともに、はじめて女性の権利が訴えられ、その70年後に初めて参政権が獲得されました。イギリスも同様に、1918年に参政権を獲得しています。

②第2波
1950年代から70年代前半にかけてアメリカを中心に起こった運動です。ウーマン・リブとも呼ばれ、第1波のような公的な領域や法制度への権利獲得だけでなく、ジェンダーバイアス、社会的・家庭的や役割、女性らしさへの抵抗を示したのが特徴です。スローガンには”The personal is political”ーー「個人的なことは、政治的なことである」と掲げられ、つまり、問題の根底は男性中心の社会や政治システムにあると主張してきました。一方で、全ての女性は主婦にならず働くべきというように、柔軟性には欠けていたという特徴もあります。

③第3波
男女間の平等だけでなく、人種や体型、肌の色、生まれ育ち、性的指向など、ひとりひとりの持つ個性を受け入れていこうという動きが特徴的です。第二波とは異なり、フェミニストはこうあるべきというよりは、個人の自由が尊重されたことも特徴の一つです。

④第4波
2010年代〜、SNSの普及に伴うオンライン・アクティビズムです。例えば、ハリウッド女優による「#Me Too」運動が想像しやすいと思います。SNSを通じ、多くの人が運動への参加がしやすく、かつ問題意識が共有しやすくなった一方で、論争や炎上につながることも多く、フェミニズムに対し過激な印象を持たれてしまう一面もあります。

フェミニズムの日本史(まもり)

日本におけるフェミニズムの歴史を、男女平等政策から見ていきます。

1970年前後に起こったウーマンリブは、女性たちによる女性開放のための運動です。この時代は、ネオリベラリズム改革、自由競争というのが台頭した時代でした。

1985年に制定された男女雇用機会均等法は、高学歴の女性の雇用機会を拡大し、意欲と能力さえあれば総合職で働くことも可能になりました。
ネオリベラリズム改革の過程で、女性たちは確かに機会を拡大しました。一方で、それ以前とは違う意味で大変になりました。
家事・育児の大半を担ってくれる配偶者を持つ男性たちと対等に働けるものなら労働市場に入れてもいいよ、という側面があったのです。
女性労働者の中でもエリートの女性たちはほんの一握り。そのエリート層の女性にすらアンフェアな競争に投げ込まれることになりました。

政府がなぜ男女共同参画を推進したか?その理由は、少子化です。
1989年に1.57ショック(出生率が過去最低)があり、その後は一時的に回復したのち徐々に低下していきました。そして、1991年には育児・介護休業法が成立しました。
育休制度は長い間女性労働者の悲願でした。ほんの数ヶ月の授乳期間の休みがあれば仕事を辞めなくてすむのに、育休がないために職場を去った女性がたくさんいました。
男女共同参画政策、そして育休法の背景には、国は女性にも働いてもらいたい、そして子どもも産んでもらいたいという思惑があったのです。

時は流れ、最近のできごととして、今年4月より育児・介護休業法が改正・施行され、男性の育児休業の取得がより柔軟になり、有期雇用者の取得要件が緩和されています。
制度というものは往々にして全てをカバーできるものではありません。政府がわたしたちにこう動いてほしい、という国作りの方向性が見てとれる一方で、わたしたちにとっては助かること、過去よりは良くなることもたくさんあるとも言えるでしょう。
日本においてもフェミニズムの先人たちが声を上げ、少しずつ権利を回復してきてくれました。
感謝とリスペクトの気持ちを持ち、わたしたちがさらに先に進めていかなければならないと思います。

フェミニズムにまつわる身近な問題

(まい)
フェミニストによるこれまでの運動により、今当たり前となっているような様々な女性の権利を私たちは享受できているかと思います。しかしその一方で、長い男性優位社会の中で形成されてきた価値観には、ジェンダー不平等が未だに色濃く残っています。このジェンダー不平等は、女性に生きづらさをもたらし、一方で男性もこのジェンダー観に苦しむことがあると思います。私は、女性に関する基本的な権利が獲得された現代においても、なお残るジェンダー不平等について問題意識を持っており、その観点からお話をさせていただきます。

〜恋愛〜
恋愛においては、「男性が選ぶ側で、女性が選ばれる側」という価値観が依然として残っているのではないでしょうか。例えば「男性から告白する、プロポーズする」という風潮は未だに残っているように感じます。
また、最近は死語になりつつありますが、「さしすせその法則」(さすが、知らなかった、すごい、センスがいい、そうなんだ)という言葉は、選ばれれる側である女性が男性を立てるという構造が背景にあるのではないかと思っています。勿論男性から告白してもいいと思いますし、男性を立ててもいいと思うんですが、これがあたり前とか、こうすべきっていうものでは無いと思います。

〜結婚〜
また、結婚においても、日頃の生活で違和感を感じることが多く、
例えば…大学を卒業して就職が決まったら、「あとは結婚だけだね!」
同僚同士の会話で、「だからあの人は結婚できないんだよ」
これらは、結婚が女性としての成功であるとか、結婚して初めて「一人前」として考えるような価値観が背景にあるのではないのでしょうか。
結婚をすることも勿論素晴らしいことですが、結婚してる・してない、もっと言えば子どもの有無にも関わらず、幸せな人生は多様にあり、様々なライフプランがあると思います。
もし、同じようなことを言われて、結婚に焦ったりモヤモヤするようなことがあれば、結婚がゴールの一つじゃないんだよって思っていただければいいなと思います。

(まもり)
フェミニズムの先達たちが戦ってきてくれたおかげで、色々な権利が享受できてるのですが、未だジェンダー不平等な社会だと思います。
言ってみれば、他の先進国でも、ジェンダー平等を達成できてる国なんて一つもありません。バックラッシュで、今まで享受できてた権利が泡のように消えると言うのが往々にしてあり得ます。

だから、私みたいに顔出しできて、本が読めるという立場にいる以上、積極的に発信していかなきゃと思います。
同時に、そういう立場にいるからこそ、例えばセックスワーク等の話など、この問題は自分は大丈夫でも、弱い立場にいる女性たちが真っ先に被害を被る問題なんじゃないかというのを考えなければいけません。

私が傍観者のまま80歳になって、未だに女の子や子どもたちが、痴漢被害にあっていたり、私が経験したようなことを、世代を超えてまた経験していたり、そんな現実を目の当たりにしたら、多分今まで社会に向き合わなかったことに後悔すると思います。
私は、自身が被差別者であることと同時に、この社会で差別の温存に加担してしまっていた身として、贖罪の気持ちもあります。

ディスカッション〜参加者の感想

講演後には、登壇者の関心のあるテーマ「恋愛・結婚のジェンダーバイアス」「痴漢(性暴力)の問題」について、少人数グループでじっくりディスカッションをする時間を設けていただきました。

最後に、参加者の方にいただいた感想を一部抜粋してご紹介します。

  • 初めてフェミニズムについて話を聞いて、漠然としたイメージしか持っていなかったが当事者意識をもって考えるようになれそうだと思いました。ディスカッションで「心のジェンダーレス」というワードを聞いて、ジェンダー問題について考えるいいスタートとなりました。
  • フェミニズムという概念を知っていることで視野が広がる、心の支えにできる、という考え方が印象に残りました。
  • 男性で理解しようとしている人が多い印象を受けました。
  • ジェンダーについてしっかり考える必要性と、まだまだ女性の立場が低い状況を性差関係なく自由に生きられるよう、声をあげていかなくてはいけないと思いました。

チャットも盛り上がり大変楽しいイベントでした!参加者の方々、できること会議の皆様、本当にありがとうございました!!

ジェンダーステレオタ…

前編はコチラ

外国人留学生の方へのインタビュー

私の意見をお伝えする前に、まずこのインタビューをご紹介したい。

私は昨年の春、日本に留学している四人の大学生の方にお話を伺った。
そして「男女平等の問題にどのように取り組むべきでしょうか?」と問うた。みなさんが口を揃えて述べられたのは「あなたたちのような若い世代が積極的に取り組み、話し合うことが大切」ということだ。

マレーシア出身の女性は「私ははじめ、自分の置かれた環境に疑問を抱かなかった。海外に出てその『当たり前』が違うとわかった。たまに地元の友達に会うと、自分も前までこうだったのだと感じる」とおっしゃっていた。
私たちは今一度、意識的に自分たちの環境を見直さなければならない。そして、それについて話し合う必要があるのだ。

解決に向けて

では、話し合いを活発化させるためにはどうすれば良いのか。

私は「学生が気軽に話し合える場所」と「教育の改善」の二つが必要だと考える。なぜなら、今私たちには二つの壁があると思うからだ。

まず、普段生活している中で、なかなかこうした社会問題を話し合う機会はない点だ。「友達に言ったら『意識高い』と思われそう」など、学生のなかにはこれらの話題にハードルを感じる人が多くいると思う。
だから、zoomなどを用いた討論の場を設け、色々な人から意見を聞ける場所を作ることができたら素晴らしいと思う。
これは私が今必要としているものでもある。

次に、この問題の解決が難しいのは、無知でいることが可能な点である。
どういう意味かというと、幼い頃からステレオタイプの考え方で育てられて大人になると、それを訂正することがほぼ不可能ということだ。目に見えない問題、特に意識を変えることは難しい。
だからこそ、全ての人に平等に与えられる教育が大切だと思う。小さいころから問題意識を持つことは、その後の考え方に大きく影響すると考えられるからだ。

最後に

男女平等は一朝一夕で叶うものではない。今までも長い歴史の中で進んで来たものだ。

一人一人が問題意識を持って日々を過ごすことが最も大切である。一度意識して回りを見渡せば、ジェンダー不平等は世間に溢れていることに気がつくはずだ。

今この記事を読んでくださったあなたはもう当事者だ。ふとした時にこの記事を思い出して頂けるととても嬉しい。


ちか(高校生)

男女それぞれに刷り込まれたジェンダーバイアスを取り除くためにはどうしたら良いかに興味がある。日本の教育や法律のジェンダー面からの革新が必要だと考えている。女性の政治参加にも関心がある。

ジェンダーステレオタ…

私がジェンダー問題に関心を持った理由

男女平等な社会をつくるために自分にできることはなんだろう?

私がこのようにジェンダー問題に興味を持ったきっかけは、2018年、私が中学三年生の時に起きた医学部の不正入試問題だった。
私は女子校に通っていて、それまで男女差別を感じる経験がなかったので、自分にも大きく関係する受験の場でこうした差別が起きたことがとてもショックだったのだ。

改めて自分の周囲を見ると、女性トイレに備え付けてある赤ちゃん用のイスや、「女性管理職」「イクメン」という言葉など、様々なところにステレオタイプの役割分担が潜んでいるのではないかと思うようになった。

日本のジェンダーギャップ指数(制度などの基準をもとにして、世界各国でどのくらい男女平等が進んでいるかを、健康・経済・政治・教育の四つの観点から表したもの)は146カ国中116位。主要七カ国の中では最下位だ。

今これを読んでいるあなたも、男女の違いで理不尽な経験をしたことがないだろうか。私はその理由は無意識のうちに人々に刷り込まれてしまった『常識』のせいだと考える。私がこれまで調べてきたことを皆さんにお伝えできたら嬉しい。

ジェンダーとはそもそも何なのか?

ジェンダーとは社会的、文化的な役割としての「男女の性」を意味する語である。
社会的な役割としての男女のあり方、「男らしさ」や「女らしさ」のような通念のことである。つまり、ジェンダーとは男女の身体的な特徴ではなく、人間が作り出した「性に対するイメージ」なのだ。

私はこの『ジェンダー』の意識を変えていく必要があると思う。人間の固定観念の形成は、主に幼少期から青年期とされる。だからなるべく早い段階で、子どもたちをステレオタイプの考え方から解放する必要があるのだ。そのためには幼い頃からの社会全体の教育が大切だと思う。

私の学校でとったアンケート

昨年の九月、学校(私立の中高一貫女子校)で、中学一年生から高校二年生までを対象に任意のアンケートをとった。

その結果、約半数の生徒がジェンダーギャップ指数で日本が遅れていることを知らなかった。さらに、こうした問題について話し合う機会がないと答えた。しかし、多くの生徒が自由記述欄では今まで自分が出会った男女差別の経験や、自身が感じた疑問を寄せてくれた。

このことから、私は日本の抱える課題は、ジェンダーステレオタイプが根付いていることはもちろん、その問題を知る機会や話し合う機会が若い世代に与えられていないことではないかと思った。

ジェンダー問題のような意識的な問題を解決することは難しい。では、私たちは具体的にどのような行動をすれば良いのか。次のブログで私の意見をご紹介したい。

後編はコチラ


ちか(高校生)

男女それぞれに刷り込まれたジェンダーバイアスを取り除くためにはどうしたら良いかに興味がある。日本の教育や法律のジェンダー面からの革新が必要だと考えている。女性の政治参加にも関心がある。

“からだ”と”こころ…

わたしたちジェンダーイコールは、「性別にかかわらず誰もが自分らしくチャレンジできる社会」そして「他者のチャレンジを応援できる社会」を目指し活動するNPO法人です。

生殖機能や身体的特徴を区別する生物学的性差のことを、英語では「セックス(Sex)」と言います。一方で、「ジェンダー(Gender)」とは、社会的・文化的性差。簡単に言えば、社会的・文化的につくられた「男/女らしさ」といった概念を含む性別のことです。

みなさんは「ジェンダー平等」という言葉にどんな印象を持っていますか?

日本語にすると「男女平等」… ややこしく感じる方も多いのではないかと思いますが、ジェンダー平等とは、女性と男性の生物学的機能を無視して同じになろう、ということではありません。

ジェンダー平等が目指すのは、「男/女だから〇〇するべき」「女/男らしくないから〇〇するべきでない」などといった、性別らしさに基づいた押し付けや決めつけをなくし、個人としての特性や志向を尊重することで、あらゆる人の可能性を広げていける社会を創っていくことです。

子供向け性教育プロジェクトI’s(アイズ)

性教育プロジェクト「I’s(アイズ)」は、ジェンダーイコールの大学生メンバーの発案からスタートしました。「居場所づくりをしたい」というコンセプトのもとに、性教育に関する知識をメンバー自身ゼロから勉強して作り上げていくプロジェクトとして活動しています。

「I’s(アイズ)」というプロジェクト名は、

①合図:ひとりひとりが自分の個性に自信を持ち主張できるように
②Eyes:相手の目を見て、ひとりひとりに向き合う
③I’s:無個性な集団(WeやThey)ではなく、個人(I)が集まり大勢になる

というトリプルミーニングから名付けました。安心できる「居場所」として、ひとりひとりを尊重したいという想いを込めています。

子どもたちを取り巻くインターネットと多様な性情報

子どものインターネット利用についての調査(※1)によると、0〜9歳の動画視聴割合は89.2%。スマートフォン利用率は中学生で65.6%、小学生でも37.6%に上ります。

動画広告には、ルッキズム(外見至上主義)を煽るようなものも数多く見られ、短絡的に作り上げられた価値観を一方的に植え付けられるリスクがあります。コミュニケーションツールの側面としては、プライベートな画像を送ったことで脅迫を受け、性被害に繋がるといった事件も起こっています。

インターネットの普及によって、親世代が子供の頃にはなかった恩恵を受けられる反面、それに付随する脅威についても目を向ける必要があるでしょう。

性教育の現状

学習指導要領には「受精に至る過程(セックス)」は取り扱わないと記載されています — 通称「歯止め規定」。

『性に関する指導についての実態調査とこれからの性に関する指導の在り方の検討』(※2)によると、300名の教諭(幼稚園〜高等学校)のうち、96%が性に関する指導を行っていますが、そのうち性加害や性行為など教科書にない内容を教えていたのは1割以下でした。指導を行わない理由としては「どう教えていいかわからない」「他のことで手一杯」との回答が挙がっています。

当プロジェクトが行ったアンケート調査(※3)では、99名の女子大学生が「小学校〜高校の間で性に関する知識を教えてもらいたかった(複数回答可)」のは、同性の先生(75.8%)が最多。その次が母親(57.6%)でした。3番目に多かったのが本(25.3%)で、インターネット(15.2%)も含むと「一人で知りたかった」というニーズも見えました。

「実際に性に関することを保護者から教えてもらった」と回答したのは半数以下の46.5%。「親とは気まずくて話しにくい」という意見もありました。

社会背景を考慮した体系的な性教育を義務教育で受けることが望ましくはあるものの、学校側のリソース不足という構造的な問題があり、ごく一部の先生や保護者が自主的に学んだ知識を教えている、というのが性教育の現状であると言えそうです。

このような状況に危機感を持ち活動をされる方も増えており、動画や本などのコンテンツは豊富になってきています。ただし、自らの判断で正しい場所へアクセスできるのは、早くても中学生頃からでしょう。

性教育とは「からだ」と「こころ」を尊重すること

性教育の根本、それは、「からだ」と「こころ」の「尊重」です。

思春期になってから性行為や避妊の方法を教えることだけが性教育ではありません。防犯の観点から、小学校低学年・あるいは未就学児にも「自分の身体と感情は自分だけのもので、決定権は自分にある」と伝えていく必要があると考えます。その前提がしっかり身についていることによって、相手のことも尊重できるのです。

「からだ」と「こころ」を、誰かの物差しで測られることのないように。自分自身を大切にできるお守りが、誰にとっても必要です。

I’s(アイズ)の活動

当プロジェクト「 I’s(アイズ)」では、小学校3年生向けの「辞書×絵本」を制作しています。

ものごとの意味を客観的に解説する辞書と、ビジュアルで直感に訴える絵本。それぞれの良さをかけ合わせた「辞書×絵本」という表現方法を通して、「からだ」「こころ」の2章立てとし、子どもたちに知っておいてもらいたいことについてひとつひとつ丁寧に伝えていきます。

また、年代・性別・子供との関わりの有無を問わず、広く一般社会へ性教育の大切さを伝えるとともに、性教育をもっと身近に捉えてもらうことを目的としたイベント活動も併せて行っています。

「子供向けの性教育について考えよう」をテーマに、2021年6月に津田塾大学「ヒューマンセクソロジー/木村朗子先生」講義にて公開授業(参加者120名)、8月には学生団体Tsuda Outreach主催の一般向けオンラインイベント(参加者40名)を開催しました。参加型のワークショップでは、子ども(小学校3年生)役と保護者役に分かれてロールプレイングを行いました。子供の性に関する疑問に大人が答えることで、性教育の難しさや、大人自身が性について知ることの大切さを体験していただきました。また、雑談やアンケートでは子供の頃や思春期の頃に感じていた悩みや困っていたことを挙げていただき、たくさんの貴重な体験談やご意見をいただきました。

わたしたちが性教育で伝えたいことは、「自分自身を大切にし、他者を尊重する」ことです。

絵本の配布に関心のある方、イベントを開催させていただける学校関係者などの方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

【参考】
※1:内閣府 令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査
※2:京都女子大学発達教育学部紀要 2021, 第17号 大川尚子, 奥村菜月, 田之上啓太
3:津田塾大学ヒューマンセクソロジー講義内, 20216


本コラムは、『市民活動のひろば 2021年9月号 No.193 〈特 集〉性を学ぶことは権利です ―「かけがえのない自分」を知るために』に寄稿させていただいた文章の再掲です。
「市民活動のひろば」さんは、東京・多摩地区を中心として2002年より年間10回の市民活動情報誌の発行をされています。

【イベントレポート】…

8/24(火)TsudaOutreach さん主催の Web イベントに、性教育プロジェクト「I’s(アイズ)」が登壇させていただきました!
平日の開催にもかかわらず、およそ 40 名の方にご参加いただきました。

今回は、「大人になる前に知っておきたかったからだこころの話子供向けの性教育について考えよう」というタイトルで、6 月に津田塾大学で行ったイベントを一般向けに再編&改修し、講演+参加型のワークショップを行いました。

性教育の現状

講演パートでは、現状把握として以下の内容を解説しました。

  • インターネットの発展による子供の性被害の広がり:
    多くの子どもたちが視聴する動画広告でルッキズム(外見至上主義)を煽るようなものなどが多く見られ、価値観を一方的に植え付けられるリスクがある。また、SNS を利用した性犯罪が増えている一方で、性被害は被害者が犯罪と認識できずに顕在化しにくいという問題がある。
  • 「歯止め規定」:
    学習指導要領では、「妊娠に至る過程(セックス)は取り扱わないもの」とされている。しかし、日本の性的同意年齢は 13 歳。情報を伝えていないのに、性的な行為に対して自己判断ができるとされているところに大きな矛盾がある。
  • 性教育の実情:
    先行研究から、先生たちは性教育が必要と認識しているものの、リソース(時間や教材)の不足により対応できていない。また、性教育の実施者は保護者であるべきと考えている先生も多いが、子どもたちの視点からは「親とは気まずくて話したくない」との意見もある。

さて突然ですが、ここでクイズです!

卵子の数は16-25歳が一番多い。これは正しい?

正解は… ×!
卵子は増えません。出生する前の状態で約 100-200 万個の卵子を持っていると言われ、そこからは年齢とともに減少します。

出典: 「ふたりの宝物」/松本えつを,しょこら・ぺすNPO法人 Fine 様よりご紹介いただきました。

性的同意年齢は、日本も韓国も同じ。これは正しい?

正解は… ×!
日本の性的同意年齢は13歳であるのに対し、「n番部屋事件」を経て韓国は16歳に引き上げられました。
先進国では 16-18 歳である国が多いのに比べると、日本の性的同意年齢は明治時代から変わっておらず、かなり低いです。

コンドームよりもピルの方が避妊率が高い。これは正しい?

正解は… ○!
ピルの避妊率は 92~99%(3,000円/1ヶ月)。
対して、コンドームの避妊率は 85~98%と言われています(1,000円/10個入)。

出典: 「CHOICE」/シオリーヌ著

みなさん正解できましたか..?
正解できなくても全然おかしくないんです。なぜなら、わたしたちの多くは、性についてほとんど何も教わっていないから。わたしたち大人も、体験や見聞きしたことから知ってきた「なんとなく」の知識しか持っていないのです..!

ワークショップ

ワークショップでは、数人のグループを、さらに「大人役(保護者や先生など、子供と関わる大人)」と「子供役(小学校3年生)」に分けます。あらかじめ決められた「子供の疑問リスト」の中から、子供役が自由に質問をして、大人役にそれに答えてもらいます。

ワークショップの目的は次の通り。

  • 基礎知識の全くない子供(小3)に性に関することを伝える難しさを体験してもらう
  • 子供の疑問に対して、ごまかさず真摯に向き合うことの必要性を感じてもらう
  • 多くの人が体系的な性教育を受けてこなかったことを改めて実感してもらう

質問と、参加者の方々が上げてくださった回答をいくつかご紹介します。

Q:赤ちゃんはどこから来るの?
A:

  • 大好きな人同士が、愛し合って、お母さんのお腹の中に外に出てくる道があって、そこから産まれてくるんだよ!
  • おしっこやうんちの道とは別の道があってそこから出てくるよ。
  • 両親が愛し合ってできたんだよ。あなたが産まれて嬉しかった!
  • 理科の教科書などから人体を説明する
  • エコー写真を見せる
  • (感想:表現を濁してしまうかも…)

Q:なんで男の人は声が低いの?
A:

  • 喉ちんこっていうところが、女性と男性で違うんだよ。楽器と同じで、リードが細いと高い声、太いと太い声になったりするんだよ。
  • 家庭を守るため。遠い昔は外敵が来た時に守るためだったけれど、今はそんなに使わないかも。
  • 「声変わり」っていうんだよ。声の低さには個人差があるよ。
  • (感想:どうして声変わりがあるか知らないことに気づいた。一緒に調べてみよう!)

Q:〇〇君/〇〇ちゃんといるとドキドキする。これってどんな気持ち?
A:

  • その人に対してだけドキドキする?(→回答:うん。)もしかしたらその子のことを特別に思っているのかもしれないね。それは恋とかという名前で呼ぶこともあるよ。
  • 素敵な気持ち!どこが好きだと思ったの?気持ち伝えてみたら?

Q:いつも異性と過ごしていて、変だよね?と言われた。
A:

  • あなたは、おかしいと思ってる?
    -「おかしくない」と思っているなら、そのままでOK
    -「おかしい」と思っているなら、何で「おかしい」と思うの?→潜在意識が分かる
  • 変じゃないよ!何して遊んでいたの?と、好きな遊びを肯定してあげる。

「質問そのものや、話してくれたことへのポジティブな反応」「ごまかさない、曖昧にしない」「わからなかったらわからないと伝える」など、前回のイベントで出た意見と共通する意見が多く見られました。
また、「外国ではこうなんだよ」「楽器に例えると.. 」「本にこう書いてあった」など、わたしたちも知らなかったことをシェアしてくれた方もいらっしゃいました!

性教育について、まずは「知らない」ことを知ること。そして、みんなで真剣に、でも構えすぎず開かれた雰囲気の中で話し合うことが第一歩なのかなと感じました。

イベント全体を通して、チャットでも参加者のみなさんが積極的につぶやいてくれました。「本を楽しみにしています」「応援しています」などなど.. たくさん暖かい言葉をかけていただき本当に嬉しかったです。
わたしたち「I’s(アイズ)」のメンバーも楽しい時間を過ごすことができました。
参加してくださった皆様、Tsuda Outreach の皆様、本当にありがとうございました!


わたしたちアイズは、子ども向け性教育の辞書絵本の制作を進めています。
並行して、今回のようなイベントを積極的に開催し、みなさんとの対話を通じて作り上げていくプロダクトにしたいと考えています。イベントを開催させていただける学校関係などの方がいらっしゃいましたら、女子校、男子校、共学問いません。是非、下記SNSのDMまでご連絡ください!

【イベント告知】大人…

性教育プロジェクト I’s(アイズ)です!
8/24(火)20時より、TsudaOutreach さん主催のオンラインイベントに登壇させていただきます!

本イベントは、津田塾大学ヒューマンセクソロジーで行った授業内イベントの内容を一般の方向けに再編したものになります。
イベントの様子はこちら

どんな方でもご参加いただけます。
性教育に関心のある方はもちろん、これまで性教育について触れてこなかった方、性教育といっても子供と関わることはあまりないな.. という方にもぜひご参加いただきたいです!
ワークショップを通じて性教育を体験し「からだ」と「こころ」について改めて考えてみませんか?

2021/8/24(火)20:00 – 21:30 @Zoom
参加無料
▽お申し込みはコチラ
https://peatix.com/event/2613644


▷主催 学生団体 TsudaOutreach

性教育プロジェクト I’s(アイズ)

 

全人類必読!!アルテ…

Amazon で見かけて衝動買いいたしました。(黄色い本をポチりたくなるのはなんで..?)
ものすごい本でしたので全人類にオススメしたいです。

「(仕事で雑務をしていたら)いい奥さんになりそうだよね」
「(バイクの免許を取ったら)彼氏の影響?」
「(セクハラを受けたと話したら)私だったら笑顔でかわすけど」
「(ナンパされて怖かったと話したら)モテ自慢?」
「(夫がごはんを作ったら)いい旦那さんだね」

こーんなモヤっとする言動から我が身を守るための護身術。それは例えば、、

質問返し
bot返し
ナウシカ返し
幼少期のなぜなぜ坊やエジソン返し
明菜返し
BL返し
ナイツ返し
修造返し
イキリオタク返し
エシディシ返し

.. ネーミングが秀逸すぎて気になりますよね..!
中にはヤバすぎて凡人には到底真似できない術もありますが、何はともあれ瞬発力をつけるためにイメトレしておくことが大事です。

「女子はまず、反射的に笑顔を出すクセを封印しよう」… ほんとこれ。
その上で「プーチン顔(あまり私を怒らせない方がいいという表情)、ハシビロコウ顔(真顔)をマスターせよ」… なるほど練習しとこ。
こう来たらこう返せ、それでもこう来たらこう返せ、さらにそれでもこう来たら定型文を繰り返すだけのbotになれ!!!!!

護身術を身につけつつ、若い人たちは年齢を重ねることをポジティブに捉えてくれるといいなぁと思いました。
歳を取ったから「言いたいこと全部言う逆ポイズン状態」わかりすぎます!
(POISONとか北斗の拳とか明菜さんとか若い人に通じるのかな笑)
「中年の忘却力で生きやすくなった」にも激しく同意。昔だったら1週間くらいムカついて眠れなかったようなことが、2時間くらいでどうでもよくなるようになりました。そんなこんなで今がいちばんラクだし楽しいんだよな。

わたしも大好きなジョジョネタ(わたしは五部推し)が満載で、お腹が痛くなるくらい笑いました!
あと3回くらい読み返して全てを吸収したいと思います。

この本から得られる効果

共感:わかるわかる〜
被害防止:なるほどそんな返しが!!イメトレしとこ!娘にもさせよ!
加害防止:あ、この言動わたしは大丈夫だけど確かに気になる人もいるよな、、これは普通に言っちゃってるな、、気をつけよう

ジェンダーバイアスな言動にモヤっている状態の人って「わたしが悪いのかな..」「こんなこと気にするなんてめんどくさがられるかな..」という思考になってしまうんですよね。わかります。
そんな人たちに「あなたは何もおかしくない!」「おかしいのはそんな言葉/価値観を再生産し続ける社会!!」と、正論とネタをいい具合に交えつつ、優しく寄り添って応援してくれる本です。
味方がいてくれるって本当に心強いですよね。シスターフッドってやつです。

それから、過去にやってしまっていた「今思えばあれってアウトだったよな」言動。
誰にでもきっとあると思うし、わたしはものすごくたくさんあります。
「男女逆だったらそれ言うか?」「男がやってダメなことは女もやったらダメ」で判断するとわかりやすい。
よくなかったなと気づいたら、その時点でやめる。過去は変えられないけど未来は変えられる。
被害者としての過去の自分も、加害者としての過去の自分も再生産しないために、戒めとともに今からできることをやっていこうと前向きになれるのです。

最後に、本著の「はじめに」の一行目、超絶ステキなイントロを紹介します。
これは… 読むしかないって思いませんか?

ヘルジャパンに生きる女子は息してるだけで偉い。そんな女子がもっと生きやすくなってほしい。

(女子向けとしている表現が多いですが、きっとどんな人も楽しめる、そして元気になれると思います!)

アンペイドワークを考…

こんにちは!篠原くるみです。

「アンペイドワーク(家事・育児などの無償労働)の分担」と「女性の経済・社会的エンパワーメント」の関係、そして、それらを取り巻く社会構造について考える、シリーズ全3回中の3回目です。

#1では、「男女の収入格差」に注目し、ジェンダーギャップの背景には「(家事や育児などの)アンペイドワークは女性がするもの」という前提が置かれていること、そして、それに付随する「女性は賃金労働を(そこまで)しなくてよい」という「期待値下げ」があることをお伝えしました。

#2では、性別役割分担が形を変えつつも受け継がれ続けている現在の社会構造について説明し、そこから抜け出すことは個人の努力では難しいことを説明しました。そして、それを踏まえた上で、性別役割分担のアンフェアさを直視し、女性を社会から排除することにつながる「期待値下げ」をなくす必要があること、そしてそれは誰にとっても無関係ではないということをお伝えしました。

今回は、わたし自身のアンペイドワークの分担についてご紹介し、どんな人でもジェンダーギャップの解消に向けたアクションを取ることができるというお話しをしたいと思います。

前回までの投稿はコチラ↓
アンペイドワークを考える#1 – 世界156カ国中120位!ジェンダーギャップを埋めるためのキーポイントは「女性への期待値下げ」
アンペイドワークを考える#2 – 性別役割分担から抜け出すのは超ハードモード!それでも「女性への期待値下げ」がどんな人にも無関係ではない理由

わたしにとっての家事分担とは、時間をフェアに分けること

2021年7月現在、わたしは配偶者(夫)、娘3人(小5・小1・保育園年中)との5人暮らしをしています。
夫とはアンペイドワークを 50/50 で分け合っています。コロナウイルスによる昨年の休校・自粛生活をきっかけに、土日も含め日毎にかっちりシフトを決める完全折半制になりました。
共有カレンダーアプリに希望日を入れて、2週間単位で7日ずつ担当します。「予定を入れたいので火曜と木曜代わってもらえませんか?」のような感じなので、「バイトのシフト」という表現がしっくりきています(無給)。
うちの場合は、「気づいた人がやる」「できる人ができる時に」といった抽象度の高いシステムでは何度も紛争になり(だいたいどちらも自分ばかりやっていると思っている)、約10年の紆余曲折を経てようやくこの形に落ち着きました。
ポイントは、家事をタスク別に分担するのではなく、時間をフェアに分けるという概念に辿りついたことだったのかなと思います。

みなさんの毎日は、AとBどちらで回っていますか?

A 24時間365日 − 仕事 = フリータイム(アンペイドワーク含む)
B 24時間365日 − アンペイドワーク = フリータイム(仕事含む)

学生さんや一人暮らしの方、お子さんがいない方は、Aという方が多いのではないでしょうか?
お子さんがいる家庭では、出産後にママがBに移行し、パパがAのままというパターンが多いのかなと思います。
まさしくうちの場合も、2人目の保育園入園(6年前)まで「朝〜保育園送り:夫、お迎え〜夜:妻」というよくある分担をしていて、わたしがB、夫はAでした。
その当時、夫はよく「家事も育児もやれるときにできるだけやっている」という主張をしていて、わたしにはどうしてもこれが納得できず…
(具体的には、育児関連のタスクの優先度が仕事より低いため、「やれるとき」「できるだけ」の範疇に収まらないとき、例えば「明日の朝会議が入ったから保育園の送りヨロシク」みたいなことが度々発生。こちらがお迎えを代わってもらいたくてもそんな急に&軽く依頼できないし、どうせ断られると思っているので親にお願いしたり、という感じでした。)
本当に言い争いも含めたくさん話し合いをしていたのですが、時間の使い方の概念がそもそも違うので、全く噛み合っていなかったなと思います。

私:「働き方に制約を受けるのはなぜわたしだけ?夫は独身時代とさして変わらないスタイルで仕事できていてズルい!!(嫉妬)」
夫:「家族のために一生懸命仕事をして、それ以外の時間で家事も育児もできるだけやっているのに、文句言われてしんどいな〜」

↑ここで起きていること、それは「性別役割分担への認識のズレ」です。

夫:「男は仕事」なんだから、自分のやるべきことは仕事を優先してやることと思っている。なぜ妻が怒っているのかわからない。
私:「仕事をするのに性別は関係ないのでは?”男の仕事”ってわたしのキャリアを踏み台にしてまでやることなの?2人の子どもなんだから、フェアに2人ともBに移行しようよ」が何を言っても伝わらない..!

…という感じでしょうか。一生交わらない平行線ですね。

粘り強い交渉の結果、時間の使い方の概念をお互い次のように合わせたうえで、アンペイドワークを折半することにしました。

C 24時間365日 − 仕事(定時) − アンペイドワーク(週あたり一人3.5日ぶん) = フリータイム

アンペイドワークを折半することで、以前の分担に比べてわたしの持ち分はかなり軽くなりました。一方で、夫は負担が増えたことになります。どう思っているのか聞いたことがなかったので、今更ながら本人に聞いてみました。

「家事や育児に参画することによって子供達から得られているパワーがあるから、むしろ全然プラスが大きい」

…!!!パワー!!!
あまりにも教科書通りすぎる回答だったのでもうちょっと聞いてみると、

  • 初めは会社の人からどう思われるか不安だった
  • 定時で帰る代わりに朝早く行ったりとか、その分大変だったこともある(これはわたしも全く同じです)
  • 会社の人にお互い頑張っているところを見てもらえていたので、環境的に恵まれていたかもしれない(うちは社内結婚でした)
  • 家事や育児をすることで絶対いいことがあるから、みんなやったらいいのに.. と思う
  • 一方で、若い人に話を聞くと、育休を取ったり定時上がりすることに対して周囲の人に悪いなと思っている、そう思わせてしまう雰囲気がある
  • 雰囲気を作るのは我々の世代のやることなので、ワークライフバランスのセミナーを受けている

そうなんだ、、ものすごい言語化&行動できていて素晴らしいですね。彼はイクボスになりそうですよ..!!

いま、うちでは家庭内で発生するアンペイドワークを「お互いやるべき”自分ごと”」という認識を共有しています。
結果的に持ち時間が同じになるフリータイムには、がっつり仕事をやってもいいし、副業、勉強、セミナー受講、ジムや美術館や映画館に行く、動画を見る、本を読む、寝まくる、何もしないなどなど、それぞれ自由に使える時間を持つことができています。
ソフト(感情)面では、「なんで自分ばっかり..」と感じていた時期よりも、子どもたちと過ごす時間や、家事の中でも好きなことをしている時間が楽しく貴重なものになりました。

「Bで全く問題なし!」「パートナーはAの時間配分でよくやってくれてるからじゅうぶんだよ」とお互いに思えているなら全然それでOKなんです。
ただ、パートナー間で時間配分の概念ズレ、性別役割分担への認識ズレがあると、いくら物理的に家事分担・家事シェアをしようとしてもあまり納得のいく結果にはならないのではと、自分の経験を通じて思うのです。

推し(先生)の料理動画を見ながら料理中の夫。スキルの発展が目覚ましいです。わたしも料理は好き。実験に似ているので、特に理系の人やものづくり好きな人は好きなのではと思います..!

物理的な分担量はさておき、初期値は 50/50 にしませんか

さて、ここで自分の例を出して言いたかったことは、全ての家庭でアンペイドワークの分担を 50/50 にしなければならないということではありません。それぞれの家庭での納得感やベストバランスがあるはずで、そこに落ち着けばハッピーです。
ただ、性別という生まれ持ったどうにもならない属性を理由として、多くの家庭でアンペイドワーク分担の初期値に大きな偏りがあること、そしてそれをデフォルトとして受け止めている社会は、歪んでいるとわたしは思います。

わたし自身は、親が性別役割分担をしている家庭で育ちました。
両親はわたしと妹に「女の子だから..」という制限をかけたことは一度もなく、習い事や進路について「やりたい」と言ったことは全て肯定してくれました。幸運だったと思います。ジェンダー平等という観点で何かを伝えられたことはないし、母も父も特別その意識はなかったと思います。しかし、制限をかけずに育ててもらったおかげで、性別役割分担を強いてくる社会に放り込まれたときに「おかしい」と気付くことができ、現状打破のために夫や上司に交渉する力を持つことができたと思っています。
一方で、アンペイドワークについては特に意識することなく育ち、結婚した当初はなんとなく「自分がやるもの」と思っていて、数多くの選択ミスをしました。そして、そのままズルズルと社会構造へ飲み込まれてしまった時期がありました。選択ミスとは、「そんなに望んでいない」ことを「女性は/母親はこうするものだから」と変換して選んでしまったことです。今思えば、親に正当に期待をしてもらって素直に頑張ってきた自分と、性別に期待される役割イメージとのギャップで、摩擦を起こしていたんですね。

「期待値下げ」をなくすには、女の子へのエンパワーメントだけでは不十分です。
人生で起きる数々の選択をポジティブでフェアなものにするために「アンペイドワークを分けあう」意識がどうしても必要になってきます。
#2 でお伝えした通り、アンペイドワークをめぐる社会構造から抜け出すことは容易ではありません。家庭の問題や個人の問題として矮小化せず、社会全体で、問題に気づいた人から手を取り合い協力していく必要があります。
アンペイドワークのほとんどは、生まれ持った性差から離すことのできないものではありません。
それから、アンペイドワークも賃金労働も、どちらも人が生きるために必要なことと捉えれば、(心と身体に無理のない範囲という条件で)どんな人でもやるべきことで、誰にでもやる権利と義務があるはずです。

もちろん、さまざまな環境で「アンペイドワークを分け合う」ことが難しい場合もあるし、積極的な選択の結果として性別役割分担をしている家庭もあるでしょう。ですが、自分が性別役割分担の解消を実践できない/しないからといって何もできないということはなく、子供達に何を伝えていくのかが大事だと思います。
女の子には「必要以上にアンペイドワークを担う必要はないし、それを前提として将来を決めなくてよい」ということ、それから男の子には、「女性があなたの分のアンペイドワークをしてくれることは当然ではない」ということ、そして全ての子どもたちに「パートナーを見つけるなら、その人とフェアに協力し合える未来を描こう」と伝えていければいいなと思います。

『世界を変えた50人の女性科学者たち』
すごくエンパワーしてもらえると同時に、女性差別の歴史がよくわかり胸が痛くもなる本です。今では考えられないほどに女性の地位が低かった時代においても、周囲の人間が「期待値下げをしなかったこと」がいかに女性の可能性を広げたかがよくわかると思います。

ジェンダーギャップをなくすためにできること

ジェンダーギャップの解消に必要なこと。
マクロ・ミクロを問わず本当にいくらでもできることはあるし、どんなことにトライしてもいい。ジェンダーギャップを解消した国は世界にひとつもありません。誰もが試行錯誤の途中で、完全解がない問題だからこそ、どんなことにもトライする価値があります。

なかでも、一番シンプルで大切なこと、そしてわたしたちがボトムアップできること、それは「自分の半径5m以内のジェンダーギャップを解消すること」です。

ジェンダーギャップをなくすために誰もが今すぐにできること、それは「女の子への期待値下げをなくすこと」です。
それと同時に、「アンペイドワークの初期値をみんなで分け合う意識」が必要です。
アンペイドワークはみんなのもの。毎日を生きるために、誰もが必要とすることです。だからこそ、掃除当番とか給食当番みたいに、もっと普通にみんなで分け合えればいいなと思います。

アンペイドワークの初期値をみんなで分け合う意識があれば、性別役割分担の意識が薄れていくでしょう。
自分が性別役割分担をしているかしていないか、したいかしたくないかはこの際置いておきましょう。あなた個人がどんな人生を生きるかと、「女だから」「男だから」を前提に置いた社会構造を見直していこうという気持ちやアクションは別物です。

性別によらずアンペイドワークを自分のものとしたうえで、誰もが生きるために必要な力を身につけよう。もし誰かと生活を共にすることがあるなら、お互いのキャリアや人生を尊重し合い、フェアな関係を築こう。
みんなでそんな社会をつくることができれば、ジェンダーギャップを埋めていくことができるはずです。


#3のまとめ

  • ジェンダーギャップをなくすために誰もができることは、半径5m以内のジェンダーギャップを解消すること。
  • 社会の共通認識として、「女の子への期待値下げ」をなくしていきたい。
  • そのために「アンペイドワークをみんなで分けあう」意識が必要。
  • アンペイドワークも賃金労働も、どちらも人が生きるために必要なことで、どんな人でもやるべきこと。もっと普通にみんなで分け合えればいい。
  • 家庭で性別役割分担をしているかどうかと、子供達に何を伝えるかは別問題。
  • 女の子には「必要以上にアンペイドワークを担う必要はないし、それを前提として将来を決めなくてよい」、全ての子どもたちに「パートナーを見つけるなら、フェアに協力し合える未来を描こう」と伝えていけるといい。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

最後に素敵な動画をシェアします。小さな女の子たちが、彼女たちを取り巻く社会構造 — 大人たちからの「期待のジェンダーギャップ」に対して問題提起をしてくれます。そして、可能性を信じて夢を描くために、全ての人の協力が必要だと伝えてくれます。わたしもその一員として、できることをやっていきたいと思っています!

Barbie — The Dream Gap Project

性教育プロジェクト始…

こんにちは!篠原くるみです。
この度、大学生メンバーの渡邉葵さんが発起人となり、子供向けの性教育の本をつくるプロジェクトが始動しました。
プロジェクト名は「I’s(アイズ)」。誰にとっても必要な性教育を、子どものうちからもっと身近に、そしてわかりやすく伝えたい!わたしたちは、ものごとの意味を客観的に表現できる「辞書」と、ビジュアルとテキストがお互いに補いあい直感的に伝えることのできる「絵本」に注目し、それらを組み合わせた「辞書×絵本」を作成します。
ジェンダーイコール大学生メンバーの渡邉葵さん・大林涼香さん、親の立場として私篠原。そして、外部から美大生の伊藤里紗さん。この4名がフラットな立場で協力しながら活動していきます。

6/16(水)、津田塾大学の「ヒューマンセクソロジー(性科学) / 木村朗子先生」にて、わたしたちアイズによる「小学生向け性教育について考える」というオンラインイベントを開催させていただきました。記事の後半で、イベントの模様をレポートします。

性教育について

みなさんは、「性教育」に対してどんなイメージをお持ちですか?
問題意識が広がり、YouTube SNS でわかりやすく発信してくれる方が増え、昔よりも身近になってきたような気がします。
一方で、学校ではあまり教えてもらったことがないとか、家族で話したりするのはちょっと気まずいと感じる人も多いのかなと思います。

あまり知られていないことですが、日本の中学校の保健体育の授業では、避妊の具体的な方法はほとんど教えていません。
(中略)
根拠となっているのが国が定める学習指導要領に1998年から記載されている「妊娠の経過は取り扱わないこととする」という文言です。
通称、「歯止め規定」と呼ばれています。

NHK 変わるか 日本の“性教育” https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201006/k10012648811000.html

「寝た子を起こさないように」、つまり、教えないことで興味を持たせないようにという論理。

今年(注: 2018年)の4月には、東京都の教育委員会が、足立区の公立中学校で行われた性教育の授業に「問題があった」とする出来事がありました。
今回指摘を受けた授業では、中学校の学習指導要領に書かれていない避妊や中絶について説明しており、都の教育委員会はこれを「子どもによっては早すぎる」として問題視したのです。

NHK もうひとつの“性”教育プロジェクト 自分らしく生きるための性教育へ https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/57/

一方で、同じ記事で次のような事例も挙げられています。

日本でも広く深い性教育を行う珍しい私立学校があります。吉祥女子中学・高等学校では50年前から独自の性教育を行ってきました。
独自に作った教科書をもとに、中学1年から高校3年まで、性をあらゆる側面から学びます。保護者には事前に説明し、クレームが来たことはないそうです。

NHK もうひとつの“性”教育プロジェクト 自分らしく生きるための性教育へ

このように、学習指導要領では性教育について指導できる範囲が決められており、生徒たちに何をどう伝えるかは学校独自の方針による部分が大きいようです。それに親の関わり方も含め、子どもにとって良質かつ実質的な性教育を受けられるか否かは「ガチャ状態」になっている、というのが現状なのではないかと思います。

子どもたちの身体は日々成長し、本当にあっという間に「(精神的にはともかく)子どもが作れる身体」になります。同時に、人間関係も親の目の届くところから離れていきます。
性に関することは他者と関わることが多いです。もし、正しい知識がないまま流されてしまったら?性犯罪に巻き込まれてしまったら?逆に、加害者側になってしまったら?「習っていなかったから知らなかった」では取り返しがつきません..!

性教育プロジェクト “アイズ” について

わたしたちが制作中のプロダクトは、「小学校3年生」向けの「辞書×絵本」です。
「からだ」「こころ」の2章立てとし、子どもたちに知っておいてもらいたいことについて、ビジュアルとテキスト両方の良さを活かしながら表現し、伝えることを目指しています。
性教育を通して子どもたちに伝えたいことは、「自分自身を大切にし、他者を尊重する」ということです。

I’s(アイズ)というプロジェクト名には、次の3つの意味=トリプルミーニングを込めています。

①手を挙げる “合図”
一人一人が自分の個性や生まれ持った特徴に対して自信を持ち、自らを主張できるようにする、という意味で手を挙げる「合図」を表現しています。

②目という意味の “eyes”
「世の中」「大勢」「みんな」という俯瞰した目線ではなく、あくまでも「目の前にいるひとり」に対して、居場所を作ったり正しい知識を身につけてもらいたい、と考えています。相手の目を見て一人一人に向き合うという意味を込めてeyesを表現しました。

③個人が集まって大勢になるという “i’s”
これら二つのねらいように「ひとりひとり」が尊重されるようになることが理想であり、「大勢」としての私たち「we」や「some」ではなく、個人が集まって大勢になるという意識をもってもらうため、「i’s」の意味を込めています。

この絵本は制作がゴールではなく、より多くの人に「手に取ってもらえるかどうか」が重要だと考えています。
「手に取りたくなる絵本」を作るためには、魅力的なデザインが必須です。美大生の伊藤さんが中心となり、ビジュアルのデザインにも注力しています。

津田塾大学ヒューマンセクソロジー: イベントの様子

さて、今回は、大学生のみなさんと「小学生向けの性教育について考える」をテーマに、ロールプレイング型のワークショップをメインにしたイベントを行いました。

[ロールプレイングのルール]
6人グループに分かれ、その中でさらにAチームとBチームに分かれる。
まず、Aチームは子供(小学3年生)役、Bチームは保護者役。事前に用意された内容から、子供役が質問を投げ、保護者役が答えていく。対話の流れで新たに質問を加えてもOK。時間が来たら役回りを交代。

質問の一部をご紹介します。

[からだパート]
  • キスって何?
  • (自宅でナプキンを発見して)これは何?何に使うの?
  • (生理が既に来ている設定)今日は生理で、体調が悪くなっちゃった。担任の先生に相談していいの?
  • 赤ちゃんはどこから来るの?
  • なんで男の子は子どもが産めないの/男の子には何で生理がないの?
  • 何で大人の男の人の声は低いの?(声変わり)
[こころパート]
  • 〇〇君/〇〇ちゃんといるとドキドキする。これってどんな気持ち?(親に恋愛感情を打ち明ける)
  • 友達のお兄ちゃん(中1)から付き合おうって言われた。付き合うってどういうこと?どうしたらいい?
  • SNSやゲームで知らない人から「会おう」って言われた。会っていいの?どうして?
  • 「ブス」って言われた。私/僕/〇〇って可愛くないの/カッコよくないの/ブスなの?
  • ネットで出てきた裸の写真を見ていたらお金を払えと言われた。どうしたらいい?
  • いつも異性の友達といて変だよねって言われた。おかしいかな?

どうですか..?迷わず全部サクッと答えられるよ!という方は少ないのではないでしょうか。

ロールプレイング後にシェアしていただいた発表パートからは、次のような意見を挙げてもらいました。

  • 「赤ちゃんはなぜ生まれるか」とか「生理はなぜ来るのか」などの問いについて、性行為や精子・卵子など予備知識の全くない相手に伝えるのがすごく難しかった。
  • 具体的、直接的な表現を心がけていた回答が良かった。ごまかさない。曖昧にしない。
  • 質問自体を肯定する、からかわないなど、もし回答に詰まってしまったとしても大人側の受け止め方が大切。

大学生ということで、みなさん子供と親の真ん中の年代ですよね。普段は小学生とあまり関わりのない方が多いのではないでしょうか。
ですが、みなさんのシェアしてくれた振り返りの中には、わたしが事前に読んでいた大人向けの性教育の本にも同じような事が書いてあった!という内容も多く、普段から授業をよく聞いて考え、理解されているのだなと思いました。(注: 今回お邪魔させていただいたヒューマンセクソロジーという科目は、日本語で言うと性科学。津田塾大学の名物授業だそうです)
とても難しいワークだったと思いますが、みなさん真摯に取り組んでくださって感動しました..!

雑談や事後アンケートからは、次のような悩みや困ったことを挙げていただきました。

  • 恋愛のことを親に話したらからかわれたことがあったので、それ以降そういうことは話さなくなってしまった。
  • 性のことについて、親が避けるので相談できない。
  • 生理不順、重さ、なかなか始まらなかったなど、誰にも相談できずに悩んだ経験がある。
  • 恋愛感情がない。
  • 避妊のことをあまり知らずにここまで来てしまった。

親の立場になって考えてみるというロールプレイングについては、

  • うまく言語化できずにもどかしかった。
  • 難しくて悩んだが、自分でよく考えたり、他の人の意見を聞けてよかった。
  • いつか子供ができたら、きちんと性教育をしたいと思った。
  • どう教えたらいいかを考えるよりも、自分がどういうことを知りたかったかに置き換えて伝えればいいのかもと思った。

などなど、たくさんの貴重な体験談やご意見をいただきました。

木村先生、貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。
そして津田塾大学の皆さん、ご参加本当にありがとうございました!!


わたしたちアイズは、辞書絵本の制作を進めていきます。
並行して、今回のようなイベントを積極的に開催し、みなさんとの対話を通じて作り上げていくプロダクトにしたいと考えています。イベントを開催させていただける学校関係などの方がいらっしゃいましたら、女子校、男子校、共学問いません。是非、下記SNSのDMまでご連絡ください!

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アンペイドワークを考…

こんにちは!篠原くるみです。
「アンペイドワーク(家事・育児などの無償労働)の分担」と「女性の経済・社会的エンパワーメント」の関係、そして、それらを取り巻く社会構造について考える、シリーズ全3回中の2回目です。
#1 では、収入格差に注目し、ジェンダーギャップの背景には「(家事や育児などの)アンペイドワークは女性がするもの」という前提が置かれていること、また、それに付随して「女性は賃金労働を(そこまで)しなくてよい」という「期待値下げ」があることをお伝えしました。そして、女性の経済的エンパワーへの期待値下げをするべきか?この認識を社会レベルで合わせていく必要があるという話をしました。
今回は、なぜ性別役割分担が受け継がれ続けているのか?性別役割分担を見直す必要があるのはなぜか?そして、なぜこの問題が誰にとっても無関係でないかについてお伝えしたいと思います。

性別役割分担のループ構造から抜け出すのは超ハードモード!

まず、なぜ女性が主にアンペイドワークを担うという構造ができているのか?を考えてみたいと思います。
社会制度的に女性と男性が同じ権利を持っていなかった時代(参政権などは終戦後の1946年に男女同権へ)を経て、職場における性差別を禁じる法律(男女雇用機会均等法、1985年)ができてからおよそ40年が経っています。
女性が高等教育を受けることが珍しくなくなり、セクハラ・パワハラが問題視され、産休・育休を経ても仕事を続ける女性が増えてきた現代においても、「男は仕事・女は家庭」が微妙に形を変えつつも受け継がれ続けているのはなぜでしょうか?
現在の社会ではこうなっているのではないかという観点でまとめてみます。

①:生物学的機能からスライド
出産をするのは女性です。どんなに体力のある人でも何週間かはこの命をかけるライフイベントにかかりきりになります。妊活に専念することを選ぶ人もいるでしょう。
これだけは生物学的な性によるもので、どうしても「性別役割分担」から引き剥がせない役割です。
この妊娠・出産という生物学的機能から、「その期間家にいた人がアンペイドワークをやり、その後も引き続きやる」という役割分担にスライドしがちです。

スライドした先では、次の②〜④のループが待っています。
次の②〜④は、全て「鶏が先か卵が先か」の問題(どちらが先かわからない因果性のジレンマ)であることに注目して見ていきたいと思います。

②:収入の少ない人がアンペイドワークを担うループ
退職・休職などでいったん仕事から離れると、大抵はキャリアを積み重ねてきた人と同等の条件で労働市場へ復帰することは難しくなります。世帯収入という観点で見ると、ある時点で収入の多い方がそのまま賃金労働に徹した方が合理的という判断をするケースも少なくないでしょう。
一方で、アンペイドワークを担うことが前提となっている人は、拘束時間や休みやすさ、不測の対応を避けるなど、融通を優先し報酬面やキャリアアップ面の条件を下げた仕事を選択することもありそうです。

→ 収入やキャリアの低い方がアンペイドワークをやるべき?アンペイドワークを抱えているから収入やキャリアを上げにくい?

③:アンペイドワークを担う人はそれ以外のことにチャレンジしづらいループ
アンペイドワークを多く担う人は物理的に時間がなくなるので、時間配分を崩す必要があることに踏み込みづらくなります。チャレンジができなければ、新しいことを始めにくくなるし、仕事では収入やポジションを上げることが難しくなっていきます。その結果、世帯単位で見たときに収入やキャリアの低い方がアンペイドワークを担うことになります(→②へ)。

→ アンペイドワークを抱えているからチャレンジできない?チャレンジできないから収入やポジションが上がらず、アンペイドワークを担うことが合理的になる?

④:普段アンペイドワークをやらない人がやったところでうまくできないループ
逆に、普段アンペイドワークをしない人が家事や育児をしようとしても、勝手がわからなかったり、いつもやっている人と同じようにはできないことが多いと思います。ここで、「やり方がダメ」「私がやった方が早い」などと「アンペイドワークマウント」を取られてしまったら.. 次もやろうとはなかなか思えないですね。

→ アンペイドワークをやらないからうまくできない?「マウント」を取られるのでやりづらくなって、やらない?

また、次のような影響もあるでしょう。
⑤:外部要因により与えられるイメージループ
子供たちは本当に素直なもので、絵本やテレビなど周りにあるものからのメッセージをそのまま受け取ります。特に、絵本はかなり昔から増版されているものが多く、「エプロンをつけたお母さん」「ネクタイを締めたお父さん」がアイコン的に描かれるものも多いです。誰もが知っている長寿アニメは性別役割分担が当たり前に描かれているものが多く、バラエティ番組などでは「男は/女は」というステレオタイプ自体がネタになっている企画も普通に見られます。
その一方で、最近では性別役割分担やジェンダー平等の描写に配慮したコンテンツも多くなってきてはいます(特に炎上の対象になりやすいCM)。
個別のコンテンツの是非は複雑になるのでここでは扱いませんが、見たものを素直に受け取る子供たちは、性別役割分担やジェンダーに対する固定観念を「そういうもの」だと思い、友達と共有し同調し温存します。そして、「そういうもの」と思って育った大人が、今度は制作側になり、価値観を再生産することになります。

→ 子供たちは大人の価値観を受け継ぎ、成長するとそれを発信する側になる。

このような複雑なループ構造が回り続けている社会においては、ある側面からは性別役割分担が合理的に見えることもあると思います。そして、性別役割分担を前提とする以上、ジェンダー間の経済格差・社会的格差を埋めることはかなり厳しいとお分かりいただけると思います。これは何重にも重なった複雑なループ構造で、個人のやる気や能力といったミクロな要素だけでは説明できない「社会構造」なのです。
ではこの構造、本当に合理的、あるいはあるべき姿だと思いますか?

①:生物学的機能からスライド でお伝えした通り、妊娠・出産という機能だけは、性別役割分担から切り離すことができません。
一方で、それ以外のアンペイドワーク、例えば、料理をする・掃除をする・子供を寝かしつける.. は生まれ持った生物学的な性差と結びついたものではありません。それにもかかわらず、このループ構造の中で、いつの間にか「女性がするもの」へと流れ着いています。その結果として「女性が経済力や社会的地位を得にくい」構造ができあがっていると考えることができます。

わたしは、すべての男性が女性にアンペイドワークを強引に押し付けているわけではないし、すべての女性がものすごく積極的にほとんどのアンペイドワークを買って出たいわけでもないと思っています。なのに、女性側に結びつけられるアンペイドワークがいつの間にか膨れ上がり、この役割分担が「当たり前」で「普通」で「デフォルト」になってしまっているのです。

さて、ここでこの社会構造についてまとめたのは、「性別役割分担はなくならない、ジェンダーの平等なんて無理なんだよ」と言いたいからではありません。
既存の社会構造に抗うことはなかなか難しいのですが、まずはその第一歩として敵を知ることが重要だからです。
「敵」とは、家事をやってくれないパートナーでも、わかってくれない上司でも、何もできない自分でもなく、こんな無理ゲーを強いてくる「社会構造」です。まずはこの構造を理解し、問題点を整理したうえで突破口を探り、本来の自分自身の価値観をもとに人生の選択を積み重ねていく必要があります。

なぜ性別役割分担意識を見直すべきなのか?

わたし個人としては、「男は仕事、女は家庭」という考えには反対です。少なくとも、何も考えずこのまま次世代に引き継いでいいものではないと思っています。
人生は物語ではないので、好きな人と結ばれてハッピーエンド♡ではないですね。むしろその後の期間の方が長いことが多いでしょう。パートナーの収入をあてにして生きていくことができなくなるかもしれません。
そのとき、すでにある財産は分割できますが、それまでの期間に積み上げてきたキャリアは分割できません。
ここに、性別役割分担のアンフェアさがあります。アンペイドワークに日々時間を費やすことは、この先の人生における稼得能力、その長期にわたる蓄積を手放してしまうことと同等であることに、どんな人も目を瞑ってはいけないと思います。
人生を持続可能なものにするためには、経済的な自立意識が必要です。では、あまり自立意識を持っていない女性が多いように見えるのはなぜなのか?それはまさに、期待値を下げられているからだとわたしは思います。

「配慮」という名の「排除」

ここで、③:アンペイドワークを担う人はそれ以外のことにチャレンジできないループ に戻ってみましょう。
アンペイドワークを担う人のことを第三者が見たとき、例えば、上司が子持ちの女性社員を評価するときに、「お子さんがまだ小さいから、チャレンジはできないよね/させるのはかわいそう」という視点になることがあります。このように評価者による「期待値下げ」が発生した結果、収入やポジションが上がらないという側面があると思います。(本人は、期待されていないなぁと感じてしまうと、モチベーションを維持することが難しくなってしまうでしょう。)
ある属性の持つ傾向をもとに一律に処遇することを「統計的差別」といいますが、その一例として挙げられるのが2018年に発覚した医大の女子受験生差別事件。「いま現在アンペイドワークを担っている」ではなくて、「将来的に担うかもしれない人」が、入り口の段階で排除された事例です。

ここまで組織的で悪質なケースはレアなんじゃないの?と感じる人もいるかもしれません。
では、「女の子だから」地元を出ないほうがいい。学歴はそこそこでいい。理数系の学部はやめといたら。バカなふりをした方が可愛がられる。稼がなくていい。養ってもらうことが幸せ。そんなに頑張らなくていい… こんな、女の子の可能性に蓋をするような言葉を聞いたことがありませんか?
その裏側には、いつか結婚するかも、子供を産むかも、夫を支える役割を担うかも、つまり、「アンペイドワークを抱えるという前提」があるのではないでしょうか。
「あなたのためを思って」行われる、「期待値下げ」。これは「配慮」ではなく「排除」です。

一方で、男性はどうでしょう?
何があっても一生働いて「妻子を養える大黒柱」にならないといけなくなりますね。もちろんこれでやる気になる人もいれば、プレッシャーに感じてしまう人もいると思います。それから、1日はどんな人にとっても24時間なので、アンペイドワークに関わりたくても必然的に時間がない、誰か(主に妻)にやってもらう、言葉を選ばずに言えば「アンペイドワークを誰かに押し付けてまでキャリアを積むこと」を期待されるのです。

一体誰が得しているのかすらよくわからなくなってきますが、結果として、「女の子への期待値下げ」と「男の子への過度な期待」によって、社会的・経済的成長を積極的に期待されてきた人たちと期待を下げられてきた人たちとの間における社会的・経済的格差、つまりジェンダーギャップができています。

「期待値下げ」は女の子に関わる人、つまりすべての人の問題

この問題、パートナー間の役割分担をどうするかの話し合いで完結するミクロな問題かというと、そうではありません。なぜなら、「期待値」の操作が行われた状態で育ってきたわたしたちは、その影響を受けた選択をしてしまうことがあるからです。
親や先生や上司、同僚、親戚や友達、メディア、SNS… 女の子と関わる全ての人が、無意識のうちに「期待値下げ」を行ってしまう可能性があります。
つまり、どんな人にとっても関係のない話ではなく、社会全体として考えていかなくてはならない問題です。

まずは、性別役割分担の合理性をゼロベースで見直していく必要があります。
精神論を抜きにして考えてみましょう。「女性にしかできないこと」「男性にしかできないこと」って実はほとんどないんですよね..
「向き/不向き」も、性別の傾向よりも個人の特性を考慮したほうが最適でハッピーであることが多いでしょう。
性別役割分担の範囲を必要最小限にすることで、「女性への期待値下げ」、そして、それと同時に「男性の社会的達成への過度な期待」をなくす。つまり、子供たちの可能性から性別によるバイアスをなくす。そうすることで、より個人としての適性が活かされる社会になり、結果としてジェンダーギャップは自然と埋まる方向に動くのではないでしょうか。


#2 のまとめ

  • 性別役割分担がいまだに受け継がれているのは、「女性が経済力を得にくい」社会構造ができているから。
  • 性別によって賃金労働と無償労働を切り分ける役割分担は、関係性を維持できなくなったときにキャリアを分割できない点で超アンフェア!
  • 「女性がアンペイドワークを担うこと前提の期待値下げ」は、配慮という名のもとに、女性を社会から排除している。
  • 「期待値下げ」は、パートナー間の役割分担の議論で完結するミクロな問題ではない。
  • 「期待値下げ」は、「アンペイドワークを将来的に担うかもしれない人=女の子」へも実際に向けられている。
  • 女の子と関わる全ての人が「期待値下げ」をしてしまう可能性がある。社会全体でなくしていこうという共通認識が必要。

次回は、性別役割分担の見直しについてお話ししたいと思います。
#3 「アンペイドワークはみんなのもの!女の子への期待値下げをなくすために、半径5m以内のジェンダーギャップを解消しよう」に続きます。